まだ厳しい世論
12月28日深夜、フジテレビは「クイズピンチヒッター」を放送した。関東ローカルの深夜番組のため事前の注目度は低かったが、放送後には複数のネットメディアが記事を配信した。理由は宮迫博之(50)が出演したからだ。
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改めて振り返ると、芸人による闇営業問題は、2019年6月に発覚した。振り込め詐欺グループの忘年会に、宮迫や田村亮(48)が出席したとFRIDAYが報じたためだ。
吉本興業は忘年会での仕事を、会社に報告しない「闇営業」で行ったとして、入江慎也氏(43)との契約を解除、入江氏は芸能界を引退した。
これを発端としたその後の騒動は、多くの人が今も記憶に新しいだろう。特に19年7月、宮迫と田村が行った独自の記者会見は、文字通りの“国民的関心事”となった。
あれから1年半が経ち、吉本興業や民放キー局は、闇営業問題は過去のものと考えているようだ。件の忘年会に出席した芸人の地上波復帰が相次いでいるのだ。
例えば、冒頭で紹介した「クイズピンチヒッター」なら、出演していた田村淳(47)に「この人は大物だと思う知り合いとつながってください」という問題が出題された。
すると田村淳は宮迫に電話。最初は留守電だったが、宮迫が折り返してきたため、テレビ電話での出演となったのだ。
その一方で、田村淳の相方である田村亮は昨年4月、「ロンドンハーツ」(テレビ朝日系列・23:15)で既に復帰を果たしている。
宮迫には“不信感”
昨年末は“本格復帰”を目指したのか12月30日、「クイズ☆正解は一年後」(TBS系列)と「ローカル路線バスVS鉄道 乗り継ぎ対決旅7 京都〜姫路城」(テレビ東京系列)の2本に出演を果たした。
宮迫と田村では、復帰の“実現性”に隔たりがあるようだ。民放キー局で番組制作に携わるスタッフが言う。
「田村亮さんは順調に復帰を果たしていく可能性が高いと思います。民放キー局の地上波で普通に姿を見ることができる日は、そう遠くないはずです。むしろ復帰成功は折り込み済みで、業界としては亮さんがレギュラー番組を持てるかどうかが関心事と言っていいでしょう」
そもそも闇営業の問題が浮上する前から、田村亮は人気があった。更に記者会見での痛々しい姿に同情票も集まっていた。
更に20年1月には、田村淳が「田村亮と吉本興業をつなぐための会社」と位置づけた株式会社LONDONBOOTSを設立している。
田村亮への同情論
同社の所属タレントとした田村亮を、吉本興業が専属エージェント契約を結ぶことになったのだ。
「田村淳さんのバックアップが効果を発揮しています。淳さんの事務所に田村亮さんが、まるで新人のように入社し、再出発するというコンセプトが視聴者に好感を持たれたのでしょう。
単なる同情論を超え、亮さんを積極的に応援する世論が形成された大きな要因だと思います。
しかしながら最も大きな要因は、亮さんはタレントとしての商品価値が依然として高かった、これに尽きると思います」
これに対して宮迫の場合は、YouTuberとして一定の人気を集めながらも、地上波復帰は依然として難しいようだ。
「亮さんは『何も知らずに忘年会に呼ばれた』と、被害者としての面を世論は認識しています。ところが宮迫さんの場合、依然として世論の風当たりが厳しいのです」
復帰に苦労する6人
例えば、騒動の最中、宮迫は「金銭の授受はなかった」と釈明したにもかかわらず、その発言はウソだったことが判明した。
「こういう経緯をぼんやりではありますが、意外に視聴者は忘れていないのです。依然としてイメージはよくありません。そのため地上波の本格復帰は難しいと思います」
宮迫の場合は自業自得かもしれないが、田村亮と同じような“被害者”でありながら、全く地上波に復帰できていない芸人もいる。
吉本興業が謹慎などの処分を下した芸人は合計で13人、更にワタナベエンターテインメントに所属するザブングルの2人も謹慎処分を受けた。
この15人のうち、地上波復帰の動きがあったガリットチュウの福島善成(43)、スリムクラブの真栄田賢(44)と内間政成(44)、そしてワタナベエンターテインメントに所属するザブングルの松尾陽介(43)と加藤歩(46)の6人を見てみよう。
「彼らの場合、復帰自体は早かったのです。例えばザブングルなら一昨年の10月、加藤さんが『さんまのお笑い向上委員会』(フジテレビ系列・土・23:10)に出演しました。
スリムクラブを見ると、真栄田さんは『探偵!ナイトスクープ』(朝日放送テレビ制作・金・23:16)のレギュラーに復帰しました。その一方で、内間さんも何本かのテレビ番組に出演しましたが、お茶の間に完全復帰、とは言えない厳しい状況が続いています」
劇場かYouTubeか
ガリットチュウの福島は闇営業問題が発覚する前は、物まね芸人として期待を集めていた。しかしながら現在、その姿をテレビで見ることは難しい。
「残酷な話ですが、彼らは『旬を過ぎた』と言わざるを得ません。謹慎期間中に多くの芸人がブレイクしました。代表例が第7世代ですが、彼らに居場所を取られてしまったというのが正直なところでしょう。そして厳しいことを言えば、後輩たちをはね除けるタレント力がなかったとも言えます」
吉本興業に所属しているスリムクラブとガリットチュウは劇場で活躍するという可能性が残されている。実際に公式サイトを検索すると──軒並みというわけではないが──公演予定が表示される。
「ワタナベエンターテインメントは、自社の劇場を持っていません。同社に所属しているザブングルは、営業や事務所の開催するライブが主戦場になると思います。彼らはコントの動画をYouTubeに公開していますが、YouTuberとしての活動も視野に入れているのではないでしょうか」
結局、今年の完全復帰が濃厚なのは田村亮だけということのようだ。